飲食店開業で成功する採用戦略 | 飲食店開業支援ならトラナビ

トラナビ通信

  • トラナビ通信2026.02.17

    「飲食店を開業したいが、人が集まらない」「求人広告に何十万円もかけているのに応募がない」「採用してもすぐに辞めてしまう

    ——これらは今、飲食業界で開業・経営する方が直面する最も深刻な課題です。

    実際、食べログ評価3.7以上の人気ラーメン店でさえ、人手不足を理由に閉店するケースが相次いでいます。採用単価は1人あたり100万円から150万円に高騰し、年間10店舗の出店計画を立てていても、人材確保ができず半分に減らさざるを得ない企業も増えています。

    本記事では、飲食店開業における採用の成功法則を徹底解説します。大手求人媒体に頼る前にできる「0円採用の実践手順」から、アルバイトを優秀な社員に育てるカンテラ採用システム」、さらには外国人採用との組み合わせ戦略までお伝えします。


    第1章:なぜ飲食店の採用はこれほど困難なのか

    構造的問題1:労働時間と待遇のアンバランス

    飲食店の採用が困難な最大の理由は、労働環境の厳しさと待遇のバランスにあります。飲食店は構造的に労働時間が長くなりがちです。

    典型的な飲食店スタッフの1日:

    • 開店2〜3時間前:仕込み作業
    • 営業時間:接客・調理業務
    • 閉店後1〜1.5時間:清掃・締め作業・翌日の準備

    つまり、営業時間が11時〜22時の店舗であっても、実際の拘束時間は朝8時〜深夜0時近くになることも珍しくありません。

    構造的問題2:現代求職者の「コストパフォーマンス」重視

    現代の求職者、特に若年層は仕事選びにおいて「コストパフォーマンス」を重視します。これは単なる「楽して稼ぎたい」という意味ではありません。

    求職者が見ているコスパの方程式:

    「時給が高くてもハードすぎると辞める」「楽でも時給が安すぎると続かない」という厳しい目線で職場を評価しているのです。以前のように「給与さえ高ければ人が集まる」時代は完全に終わりました。

    構造的問題3:採用単価の異常な高騰

    飲食業界の採用単価は現在、1人あたり100万円から150万円と言われており、これは数年前の倍近い水準です。

    採用単価150万円の内訳例:

    • 求人媒体掲載費:月額10〜30万円 × 3〜6ヶ月
    • 人材紹介会社手数料:年収の30〜35%
    • 面接対応コスト:店長・社員の時間給換算
    • 採用後の教育コスト:OJT期間の人件費

    この結果、「汗水流して稼いだ利益がほぼ採用コストに消えていく」という状況に陥っている店舗が少なくありません。


    第2章:求人媒体に頼る前の「0円採用」4ステップ戦略

    多くの経営者が陥る間違いは、人が足りないとなるとすぐにタウンワークやIndeedなどの有料媒体に手を出してしまうことです。しかし、お金をかける前にやるべきことが4つあります。

    ステップ1:従業員の知り合いへのアプローチ(リファラル採用)

    最初に取り組むべきは、現在働いているスタッフの知り合いにアプローチすることです。この方法の最大のメリットはコストが一切かからないことです。

    リファラル採用の潜在力を数値化:

    人は平均して親しい知り合いを6人程度持っていると言われています。もし店舗に10人のスタッフがいれば:

    この60人の中から1〜2人も採用できないということは稀です。しかし、この基本的なアプローチを体系的に実践している企業は驚くほど少ないのが現状です。

    成功させる5つのポイント:

    1. 時給の競争力を明確化:エリア相場よりも時給100〜200円高い設定
    2. 職場の雰囲気を可視化:スタッフの笑顔写真や動画をSNSで発信
    3. まかないの魅力を前面に:「1食500円相当のまかない無料」など具体的に表現
    4. 紹介インセンティブ制度:紹介者に3万円、入社者に5万円(3ヶ月勤務後)
    5. 定期的なリマインド:月1回の全体ミーティングで「友達紹介キャンペーン」を告知

    ステップ2:お客様(常連客)からの採用戦略

    次にアプローチすべきは、店舗を利用してくださるお客様です。

    お客様採用の3大メリット:

    1. ギャップゼロ:すでにお店の雰囲気や味を知っており、好意を持っている
    2. 高い定着率:特に常連客の場合、店舗への愛着があり早期離職が少ない
    3. 即戦力化:メニューや店舗の特徴を理解しているため教育期間が短縮

    具体的な7つの接点作り:

    1. 店頭の張り紙:A3サイズ以上で目立つデザイン、QRコードで応募ページへ誘導
    2. 店内ポスター:トイレ、レジ横、各テーブルに「スタッフ募集」
    3. テーブルPOP:「一緒に働きませんか?」のメッセージカード
    4. レシート印刷:「スタッフ募集中 時給1,200円〜」を印字
    5. 常連客への直接声かけ:「もしお知り合いで飲食で働きたい方がいたら」
    6. 会計時の一言:「今スタッフ募集してるんです。よかったら」
    7. ショップカード:名刺サイズの募集カードをレジに設置

    ステップ3:お客様の知り合いへの拡散(SNS戦略活用)

    お客様のさらに外側、つまり「お客様の友人・知人」にアプローチするために、SNSを戦略的に活用します。重要なのは、お客様に拡散してもらう仕組みを作ることです。

    効果的なSNS拡散キャンペーン設計:

    • Instagramストーリー拡散:店舗の「スタッフ募集投稿」をストーリーでシェア、ハッシュタグ「#店名_バイト募集中」をつけてもらい、特典としてトッピング無料
    • Twitter(X)リツイート:募集ツイートをリツイートしてくれた方に次回来店時特典

    投資対効果の計算:

    仮に1回の特典が500円相当として、100名のお客様が拡散してくれた場合:

    これにより、お客様の友人・知人という信頼できるネットワーク経由で数千人にリーチできます。求人媒体に月額20万円を支払うよりも、はるかに費用対効果が高いのです。

    ステップ4:求人媒体の戦略的活用

    ここまでのステップを実践した上で、それでも人材が不足する場合に初めて求人媒体の利用を検討します。

    求人媒体で成功するための3つの鉄則:

    鉄則1:従業員の写真を必ず掲載する

    多くの飲食店が犯す最大の過ちは、料理の写真や店舗の外観だけを掲載することです。求職者は「美味しそうな料理」を見ているのではなく、「ここで働く自分の姿」を想像しているのです。

    効果的な写真構成:

    • メイン写真:スタッフ全員の笑顔の集合写真
    • サブ写真1:同年代のスタッフが楽しそうに働く様子
    • サブ写真2:まかないを食べている風景
    • サブ写真3:店長や先輩スタッフの優しい表情

    鉄則2:「楽しさ」を伝える企画を盛り込む

    単なる条件(時給、勤務時間、休日)だけでは他店と差別化できません。

    実践例:独自企画の数々

    1. まかない担当制:週替わりでスタッフがまかないのメニューを考案
    2. ランチ面接:面接時に一緒にランチを食べながら気軽に話す
    3. まかないコンテスト:月1回、スタッフ投票で最優秀まかないを決定

    鉄則3:IndeedとタウンワークPlusの使い分け

    現在の求人市場では、IndeedとタウンワークPlus(タウンワークの求人がIndeedにも掲載される仕組み)の組み合わせが最も効果的です。


    第3章:カンテラ採用システム:アルバイトを最強戦力に変える革命的手法

     

    カンテラ採用とは:採用ではなく「育成」の発想

    「カンテラ採用」とは、FCバルセロナの育成組織「カンテラ」(メッシやイニエスタを輩出)から名付けられた、アルバイトスタッフを社員として育成するシステムです。

    これは単なる「採用手法」ではなく、むしろ**「教育システム」**としての側面が強いアプローチです。アルバイトスタッフにインターンシップのような成長機会とやりがいを提供し、自然と「この会社で社員になりたい」と思う人材を育てていく仕組みです。

    カンテラ採用の5つの圧倒的メリット

    メリット1:採用コストの劇的削減(最大80%削減)

    従来の中途採用では、1人あたり100〜150万円のコストがかかります。10人雇うなら1,000〜1,500万円です。

    コスト比較:10名採用の場合

    従来の採用方法:

    カンテラ採用:

    削減できた500〜1,000万円を、社内の教育環境や労働環境の改善、給与水準の向上に投資することで、さらに人材が集まりやすい好循環を生み出します。

    メリット2:アルバイトの圧倒的戦力化

    カンテラ採用では、アルバイトスタッフに積極的に成長機会を提供します。

    具体的な戦力化施策:

    1. 店舗ミーティングのアルバイト主導:店長は参加するが発言せず、アルバイトリーダーが司会進行
    2. シフト管理の一部委譲:アルバイトリーダーが週次シフトの原案作成
    3. 新人教育の担当:先輩アルバイトが新人のOJTを担当
    4. メニュー開発への参加:季節限定メニューのアイデア出しと試作

    数値で見る戦力化の効果:

    通常、売上500万円規模の店舗では社員3人(店長、料理長、サブ)で運営します。カンテラ採用を実施している店舗では、アルバイトリーダー2人を加えることで:

    この2名分の戦力差が、サービス品質、営業時間の柔軟性、社員の負担軽減に直結します。

    メリット3:離職率の大幅低下(ギャップゼロ採用)

    中途採用や新卒採用で最も多い離職理由は「入社前後のギャップ」です。カンテラ採用では、すでに数ヶ月〜数年アルバイトとして働いているため、職場の実態を十分理解した上で社員になる決断をします。

    離職率の比較データ:

    • 中途採用の1年以内離職率:30〜40%
    • カンテラ採用の1年以内離職率:5〜10%

    メリット4:社員全員が人事部マインドを持つ組織へ

    カンテラ採用では、**「自分たちの仲間は自分たちで採用し、自分たちで育てる」**というマインドが組織全体に浸透します。

    メリット5:幹部候補の自然な育成

    カンテラ採用を通じて、店長や幹部候補となる人材が自然と育っていきます。人を育てるプロセスを通じて、教える側の社員や店長のマネジメント能力も飛躍的に向上します。

    成功の鍵:大学2年生からのアプローチ

    カンテラ採用を成功させるための最重要ポイントは、大学2年生の段階からアプローチを始めることです。

    なぜ2年生なのか?

    3年生になると、学生はすでに「どの業界に進むか」をある程度固めています。飲食業界を選択肢に入れていない学生を、3年生になってから説得するのは非常に困難です。

    2年生アプローチの戦略的優位性:

    1. 先入観がない時期:まだ業界を絞っていないため、飲食業界への抵抗感が少ない
    2. 成長実感を積む時間がある:1〜2年かけて成功体験を積ませられる
    3. 会社への愛着が育つ:長期間働くことで「ここで社員になりたい」という気持ちが自然に芽生える

    第4章:外国人採用との組み合わせ戦略

    二択から両立へ

    今後の飲食業界では、「カンテラ採用」か「外国人採用」かの二択ではなく、両方を並行して進める時代になっていきます。現在、社員の30%から50%が外国人という企業も増えてきています。

    外国人採用の現実とコスト

    外国人スタッフを日本人と同等のレベルまで育成するには3〜5倍のコストと時間がかかりますが、カンテラ採用を先に実施している企業は、アルバイト教育のシステムが確立されているため、そのノウハウを外国人スタッフにも応用できます。

    実践的アプローチ方法

    アプローチ1:日本語学校への直接訪問

    • 学校と提携し、アルバイト先として紹介してもらう
    • 会社の信頼性を示す(大手企業との取引実績など)
    • 「飲食業界はブラックではない」ことを丁寧に説明

    アプローチ2:優秀な外国人スタッフへのキャリアパス提示

    • 「アルバイト→社員→副店長→店長」という明確なキャリアパス
    • 母国での出店を任せる可能性も提示

    • 第5章:業態別採用戦略と開業準備

    採用難易度による業態分類

    採用しやすい業態:

    • カフェ、おしゃれなレストラン
    • カフェダイニング
    • 人気ブランドのフランチャイズ

    採用が困難な業態:

    • ラーメン店
    • 深夜営業の居酒屋
    • 重労働のイメージがある業態

    開業3ヶ月前からの採用タイムライン

    3ヶ月前(物件契約直後):

    • SNSアカウント開設(Instagram、X、LINE公式アカウント)
    • 「○月オープン予定!スタッフ募集開始」の投稿
    • 近隣への挨拶回りで「オープニングスタッフ募集」チラシ配布

    2ヶ月前:

    • 内装工事の様子をSNSで定期的に発信
    • 求人媒体への掲載開始
    • オープニング説明会の開催(週末に複数回)

    1ヶ月前:

    • 採用決定者との顔合わせ、チームビルディング
    • プレオープン(招待制)でのオペレーション確認
    • 最終的な人員調整、追加募集

    まとめ:採用は「ファンづくり」である

    飲食店開業における採用成功の鍵は、段階的アプローチと長期的視点にあります。

    採用の正しい順序(コスト順):

    1. 従業員の知り合い:コスト0円、成功率高
    2. お客様:低コスト、定着率高
    3. お客様の知り合い:SNS活用、質の高い応募
    4. 求人媒体:補完的に活用

    長期戦略(1〜3年):

    • カンテラ採用システムの構築:アルバイトを社員に育てる仕組み
    • 大学2年生からのアプローチ:3年かけて優秀な人材を育成
    • 外国人採用との組み合わせ:多様性のある組織づくり

    人手不足で出店できない飲食店が増える中、成功している企業には共通点があります。それは、**「採用は単なるテクニックではなく、ファンづくりである」**という認識です。

    • スタッフが友人を紹介したくなる職場環境
    • お客様が「ここで働きたい」と思う店舗づくり
    • 働く人の成長を本気で支援する教育システム
    • 社員全員が採用と育成に責任を持つ組織文化

    今日から始められる3つのアクション:

    1. 現在のスタッフ全員に「友達紹介キャンペーン」を告知する
    2. 店舗の目立つ場所に「スタッフ募集」のポスターを貼る
    3. InstagramまたはXアカウントで「一緒に働きませんか?」と投稿する

    飲食店の開業は、単に物件を借りてメニューを作ることではありません。「人を集めて育てる仕組みをつくること」とセットで考える時代になっているのです。

    この記事を書いた人
    管理部