【飲食店開業】原価高騰時代を生き抜く方法 | 飲食店開業支援ならトラナビ

トラナビ通信

  • トラナビ通信2025.12.23

    【飲食店開業】原価高騰時代を生き抜く!
    利益を確実に残すための原価管理・値上げ戦略完全ガイド

    「飲食店を開業したいけれど、今の物価高騰で本当に利益を出せるのだろうか…」
    「せっかくお店を持っても、数年で閉店に追い込まれるのは絶対に避けたい」

    これから飲食店開業を考えている方にとって、このような不安は当然のことです。食材費、人件費、光熱費、すべてが上昇する今、正しい知識なしに開業することは非常に危険です。

    現在の飲食業界では、「美味しい料理を作れば成功する」という時代は完全に終わりました。原価管理、適切な値上げ戦略、効率的なコストコントロール。これらの経営スキルなしに、飲食店開業を成功させることは極めて困難です。

    実際、開業後3年以内に廃業する飲食店の割合は約70%と言われています。その主な原因は「原価管理の失敗」です。食材費だけを見て原価を計算し、包材費や歩留まりを考慮していなかった。値上げのタイミングを逃し、利益が出ない状態が続いた。こうした失敗は、正しい知識があれば防げるものばかりです。

    本記事では、実際の飲食店経営現場から得られた知見をもとに、飲食店開業前から知っておくべき原価管理の基本から、原価高騰時代を生き抜くための実践的な戦略まで徹底的に解説していきます。この知識があるかどうかで、あなたの店舗の生存率は劇的に変わります。

    この記事で学べる5つの重要ポイント

    • 開業前から知っておくべき「本当の原価」の正体と正確な計算方法
    • 原価率を劇的に改善する4つの実践テクニックと具体的な数値目標
    • お客様を離れさせない正しい「値上げ」の進め方とタイミング
    • 絶対に避けるべき危険なコストカットの見分け方と代替案
    • データに基づいた経営判断を可能にする管理システムの構築法

    📊 第1章:飲食店開業で最も重要な「原価」の正しい理解

    飲食店経営において、数字は「お店の健康状態」を示すバロメーターです。特に原価の考え方を間違えると、どんなに売上があっても利益が残らない体質になってしまいます。開業前にこの基本を理解しておくことが、成功への第一歩となります。

    ⚠️ 原価計算の落とし穴:見えないコストを見逃すな

    多くの飲食店開業者が陥る最大の罠は、「原価」を食材費だけで考えてしまうことです。これは非常に危険な認識です。実際の原価には、食材費以外にも多くの「見えないコスト」が含まれており、これを見落とすと開業後すぐに資金繰りに困ることになります。

    例えば、テイクアウトのコーヒーを500円で販売する場合を考えてみましょう。コーヒー豆とミルクで50円かかったとします。多くの開業者は「原価率は10%だから利益率90%!これは儲かる商売だ!」と考えてしまいがちです。しかし、これは大きな間違いです。

    商品をお客様の手に渡すためには、以下のような様々なコストが発生します。包材費、消耗品費、そして忘れがちな光熱費の一部も実質的には原価に含まれます。

    項目 詳細 金額
    コーヒー豆 1杯分(約15g) 35円
    ミルク 30ml 15円
    テイクアウトカップ 断熱仕様 30円
    専用フタ 飲み口付き 15円
    ストロー 紙製(環境対応) 10円
    持ち帰り袋・ナプキン ロゴ入り 15円
    合計原価 120円

    📝 正しい原価率の計算
    120円 ÷ 500円 × 100 = 24%

    このように、包材や付属品まで含めて計算すると、実際の原価率は想定の2倍以上になることが珍しくありません。これを見落としたまま飲食店開業してしまうと、「売れているのに利益が出ない」という深刻な状況に陥ります。

    さらに注意が必要なのは、これらの包材費も物価高騰の影響を受けて年々上昇しているという点です。2023年以降、プラスチック製品の価格は平均15〜20%上昇しており、紙製品も同様の傾向にあります。環境配慮型の包材はさらに高価です。定期的な原価見直しが不可欠です。

    📈 歩留まりを考慮した現実的な原価計算

    さらに重要なのが「歩留まり」の概念です。歩留まりとは、仕入れた食材のうち実際に料理に使える部分の割合を指します。この歩留まりを正確に把握していないと、理論上の原価と実際の原価に大きな乖離が生じ、月末の収支報告で「なぜこんなに利益が少ないのか」と頭を抱えることになります。

    野菜や肉、魚などの生鮮食材は、必ず廃棄する部分が発生します。外側の傷んだ葉、骨、内臓、芯、筋、脂身など、お客様に提供できない部分のコストも、実質的には原価に含まれているのです。これを無視した原価計算は、経営判断を誤らせる原因となります。

    🥬

    レタス1玉(200円)

    • 外側の傷んだ葉:約10%廃棄
    • 芯の部分:約15%廃棄
    • 実際に使える部分:約75%

    実質原価:約267円相当

    🐔

    鶏もも肉1kg(800円)

    • 余分な脂肪:約10%廃棄
    • 筋や皮の一部:約5%廃棄
    • 実際に使える部分:約85%

    実質原価:約941円相当

    🐟

    魚1尾(1,500円)

    • 頭・内臓・骨:約40%廃棄
    • ヒレや端材:約5%廃棄
    • 実際に使える部分:約55%

    実質原価:約2,727円相当

    歩留まり無視の危険性

    歩留まりを考慮せずに原価計算すると、実際の原価率は計算値より5〜10%も高くなります。
    月商300万円の店舗なら、月15万円〜30万円もの「見えない赤字」が発生している可能性があります。

    🎯 飲食店経営の基準となる原価率の目安

    業界標準として、以下の数値を目安に飲食店開業の収支計画を立てることが重要です。これらの数値は、長年の飲食店経営データから導き出された「生き残るための基準値」です。ただし、業態や立地、戦略によって柔軟に調整する必要があります。

    🍽️

    フード原価率

    28~35%

    高級店:30〜35%(素材重視)

    カジュアル店:28〜30%

    ファストフード:25〜28%

    🥤

    ドリンク原価率

    18~25%

    アルコール:18〜22%

    ソフトドリンク:20〜25%

    コーヒー:15〜20%

    👥

    人件費率

    28~32%

    フルサービス:30〜32%

    セルフサービス:25〜28%

    ※社会保険料込み

    最重要指標:FLコスト(Food + Labor)

    FLコストを60%前後に抑えることが、健全な飲食店経営の絶対条件です。

    【実例】月商300万円の場合の理想的な構造
    • 食材原価(30%):90万円
    • 人件費(30%):90万円
    • FLコスト合計:180万円(60%)
    • 残り120万円で家賃・光熱費・広告費・利益を確保

    この比率が65%や70%を超えると、利益確保が困難になります。

    🚀 第2章:原価率を劇的に改善する4つの実践戦略

    「原価が高いから利益が出ない」と嘆くだけでは経営は改善しません。原価高騰時代において、飲食店開業を成功させるためには、単に「安く仕入れる」だけでは不十分です。多角的なアプローチで原価率をコントロールする必要があります。ここでは、現場ですぐに実践できる具体的な改善戦略を4つご紹介します。

    🗑️ 戦略①:ロス(廃棄)の徹底削減

    原価には「お客様に提供される分」「廃棄される分」があります。廃棄を減らすことは、最も健全で即効性の高い原価率改善方法です。仕入れ値を下げる交渉よりも、廃棄を減らす方が確実に利益を増やせます。

    多くの飲食店では、廃棄ロスが売上の3〜5%にも達しています。月商300万円の店舗であれば、毎月9万円〜15万円もの食材を捨てていることになります。これを半分に削減できれば、年間で54万円〜90万円もの利益改善につながります。これは人件費削減や値上げよりも、はるかに健全な方法です。

    理論原価と実際原価の管理システム

    毎月の棚卸しで以下を確認し、差異分析を行ってください:

    • 理論原価:レシピ通りに作った場合の理論上の原価
    • 実際原価:月末棚卸しから逆算した実際にかかった原価
    • 差異率:(実際原価 – 理論原価)÷ 売上高 × 100

    ⚠️ 差異率が3%以上の場合は緊急対応が必要

    主な原因:廃棄過多、オーバーポーション、盗難、レシピ不遵守、仕込みミス

    廃棄削減の具体的施策

    • 曜日別出数予測:過去データから曜日ごとの需要を予測し、適切な仕込み量を設定
    • FIFO(先入先出)の徹底:古い食材から使用するルールを厳格化
    • 賞味期限管理:3日前アラート、当日特売メニュー化などの仕組み構築
    • 仕込み量の標準化:「勘」ではなく「データ」に基づいた仕込み
    • 端材活用メニュー:野菜の端材でスープ、肉の切れ端でまかないなど

    🎯 戦略②:商品ミックスの最適化

    すべてのメニューを同じ原価率にする必要はありません。「集客商品」と「利益商品」を戦略的に配置することで、全体の原価率をコントロールしながら、顧客満足度と利益の両立が可能になります。

    🎪

    集客商品(Loss Leader)

    原価率:40~50%

    話題性があり、お客様を呼び込める看板メニュー。SNSで拡散されやすい見た目、コスパの良さで集客します。利益は薄くても、来店のきっかけを作る重要な役割を果たします。

    例:ボリューム満点ランチ、季節限定メニュー、SNS映えするパフェ

    💰

    利益商品(Cash Cow)

    原価率:20~25%

    しっかりと利益を残す高収益メニュー。ドリンク類、サイドメニュー、デザートがこれに該当します。この販売比率を高めることが利益確保の鍵です。

    例:アルコール、ドリンクバー、フライドポテト、サラダ

    具体例:同じ500円商品でも利益は大違い

    ✅ 原価率30%の商品

    販売価格:500円

    原価:150円

    粗利益:350円

    ⚠️ 原価率50%の商品

    販売価格:500円

    原価:250円

    粗利益:250円

    同じ労力・同じ時間で100円も利益が変わります!

    💼 戦略③:仕入れコストの戦略的削減

    単純な値切り交渉ではなく、Win-Winの関係構築が重要です。仕入れ業者との良好な関係は、価格面だけでなく、品質の安定供給、緊急時の対応、新商品情報の提供など、長期的なメリットをもたらします。

    📦

    ロット単位での価格交渉

    一度の仕入れ量を増やす代わりに単価を下げてもらう方法。ただし、保存期間と廃棄リスクを考慮する必要があります。配送コスト削減分を還元してもらいます。

    🚛

    直接仕入れルートの開拓

    生産者からの直接仕入れで中間マージンをカット。新鮮さと価格の両面でメリットがあります。市場や展示会での情報収集も重要です。

    🔄

    複数業者の競争原理

    メイン業者2〜3社を確保し、価格と品質で競争してもらう。依存度を下げることでリスク分散にもなります。

    ❄️

    保存技術の活用

    真空パックや冷凍技術を活用し、価格が安い時期に大量仕入れ。旬の食材を通年使用できるメリットもあります。

    ⬆️ 戦略④:商品価値向上による正当な値上げ

    原価高騰への対応として、「価値を上げて価格を上げる」戦略が最も健全です。単純な価格アップではお客様は離れてしまいますが、それに見合った価値向上があれば、むしろ満足度は高まり、リピート率も向上します。

    正当な値上げを実現する5つの方法

    • 季節限定食材の追加:旬の高級食材を少量でも加えることで特別感を演出
    • 盛り付けの改善:器を変える、彩りを工夫する、高さを出すなど視覚的満足度を向上
    • 品数の増加:小鉢や前菜を追加し、お盆全体を華やかに見せる
    • 提供スピードの改善:待ち時間短縮は顧客満足度に直結する重要要素
    • サービス品質の向上:接客、清潔感、BGM、照明など総合的な体験価値を高める

    成功する値上げの3ステップ:
    ①価値向上 → ②段階的実施 → ③全体的調整

    ⚠️ 第3章:絶対に避けるべき危険なコストカット・値上げ手法

    経営が苦しくなると、つい手を出したくなる「悪手」があります。これらは一時的に数字を改善させますが、長期的にはお店の寿命を縮める劇薬です。飲食店開業を成功させるためには、これらの手法を絶対に避ける必要があります。

    🚫 満足度を下げる「ステルス値上げ」の危険性

    原価高騰に直面した際、多くの飲食店が陥る罠が「ポーション削減(量を減らす)」による実質的な値上げです。いわゆる「ステルス値上げ」ですが、これは顧客からの信頼を最も損なう行為です。SNS時代の今、こうした変化は瞬く間に拡散され、店舗の評判を大きく傷つけます。

    絶対にやってはいけないNG行動トップ5

    1. 唐揚げを3個から2個にこっそり減らす → 「量が減った」とSNSで拡散される
    2. 付け合わせのポテトを少しずつ減らす → 「ケチになった」印象を与える
    3. 全体のボリュームを目立たないようにダウン → 「しょぼくなった」と感じられる
    4. 食材のグレードをこっそり下げる → 味の変化で気づかれ、信頼を失う
    5. 器を小さくして量を少なく見せない工夫 → 「騙された」感を与える最悪の手法

    → お客様に「裏切られた」印象を与え、二度と来店しなくなる!

    💀 店の活力を奪う危険なコストカット

    経費削減は重要ですが、削減してはいけない「聖域」もあります。特に、スタッフのモチベーションや店舗の雰囲気に直結する部分のコストカットは、長期的に大きなマイナスをもたらします。

    🍚

    まかないの質を下げる

    スタッフのやる気を削ぐ一番の原因になります。美味しいまかないは、スタッフが自店の味を知る教育の場でもあります。モチベーション低下→サービス品質低下→売上減少の悪循環を生みます。

    🧹

    清掃・衛生費の削減

    業者への委託をやめてスタッフに負担させたり、洗剤をケチったりすると、店内の清潔感が損なわれ、客足が遠のきます。衛生面での事故リスクも高まります。

    💡

    店内環境の過度な節約

    照明を暗くしすぎる、空調を極端に節約するなどは、お客様の滞在時間を短くし、追加注文の機会を奪います。快適性は売上に直結する重要要素です。

    📈 第4章:データドリブンな経営管理システムの構築

    飲食店経営において、「感覚」ではなく「数字」に基づいた判断が生存の鍵となります。「なんとなく儲かっている気がする」「忙しいから大丈夫だろう」という感覚的な経営では、気づいたときには手遅れになっているケースが非常に多いのです。

    📊 日報で管理すべき重要項目

    毎日記録し、可視化すべきデータは以下の通りです。これらを日報として記録し、スタッフ全員で共有できる仕組みを作ることで、全員が経営意識を持って働けるようになります。

    日報で毎日チェックしたい項目

    売上高
    (フード・ドリンク別)
    客数・客単価
    (ランチ・ディナー別)
    食材原価
    (当日の仕入れ額)
    人件費
    (労働時間×時給)
    廃棄ロス額
    (メニュー名と数量)
    特記事項
    (天候、イベント、クレーム等)

    これらをフォーマット化して、毎日メールやクラウドで確認できるようにしておくと、「感覚」ではなく「数字」で経営判断ができるようになります。

    🔍 多角的視点による総合判断

    飲食店の経営は「一つの財布」で行われています。例えば、鶏肉の仕入れ価格が上がったとしても、野菜の価格が下がっていたり、オペレーション効率化で人件費が下がっていれば、全体としての利益は確保できます。単一のコスト上昇に一喜一憂して、安易な値上げや品質低下に走るのは危険です。

    飲食店の数字は、新人が入る・ベテランが辞める・家賃が変わる・電気代が上がるなど、常に動く「生き物」です。月に1回まとめてではなく、日々の変化を小さく見ていくことで、大きなトラブルになる前に手を打てるようになります。お店全体の収支バランスを俯瞰し、どこで調整すればお客様に負担をかけずに利益を確保できるかを考える「経営者視点」を持ちましょう。

    🎯 まとめ:飲食店開業成功への完全実践ロードマップ

    原価高騰時代における飲食店開業を成功させるためには、
    以下の要素を統合的に実践することが不可欠です。

    📋 開業前の必須準備

    • 包材・歩留まりを含めた正確な原価計算システムの構築
    • FLコスト60%以内を実現する詳細な収支計画策定
    • 集客商品と利益商品を組み合わせた戦略的メニュー設計
    • 複数仕入れルートの確保とリスク分散体制の構築

    🔄 開業後の継続改善

    • 日報システムによる数字管理の徹底と週次レビュー
    • 月次でのロス・廃棄状況の詳細分析と改善施策実行
    • 価値向上とセットでの段階的値上げの計画的実施
    • スタッフ教育への継続的投資と技術向上プログラム

    原価高騰が続く今の時代、
    「なんとなく」の経営では絶対に生き残れません。

    しかし、正確な原価管理、戦略的な値上げ、データに基づいた経営判断を身につければ、
    飲食店開業はまだまだ大きなチャンスのあるビジネスです。

    本記事で紹介した原価管理の手法を実践し、
    利益をしっかり残しながら、長く愛される飲食店を実現してください。
    あなたの飲食店開業の成功を心から応援しています! 🎉

    この記事を書いた人
    管理部